「そういえば琥珀さん」 夕食後、いつもと変わらぬお茶会の席で、志貴が琥珀に問いかける。 「はい、なんでしょう?」 「今日の昼に有彦と話してたんだけど、ロボットには“ロボット三原則”ってあるじゃない」 「ええ、人間を殺しちゃいけませんとか、人間のエゴ的命令にも従いなさいとか、 自分の身くらい守れないで何がロボットだ、ってやつですよね?」 「………かなり穿った見解だけど、間違ってはいないわね」 ふぅ、とため息をついて秋葉が呟く。 「で、有彦が言うには、メイドにも“メイド三原則”みたいなもんがあるんじゃないかと。 実際どうなの?」 「兄さんはいつも、そんなくだらない話しをご学友となさっているのですか?」 秋葉がじろりと志貴を睨む。 「いや、いつもってわけじゃ……」 とは口で言いながらも、有彦と有意義な会話をした記憶のない志貴。 そんな二人のやりとりをよそに、 「あ、ありますよ」 と笑顔で答える琥珀。 「え、本当にあるの?」 「私もそれは初耳だわ」 驚く志貴、秋葉、それに翡翠。 「?なんで翡翠まで驚いてるんだ」 「あはっ、翡翠ちゃんにはまだ教えてませんでしたから。いいでしょう、 この際ここで発表しちゃいます」 えっへん、と一つ変な咳払いをして姿勢を正す琥珀。 「メイド三原則〜。 一つ、メイドはご主人様の命令に絶対服従。 一つ、メイドはご主人様を全力で守護。 一つ、メイドはご主人様にぞっこんLOVE☆」 「……いや、最後の絶対違うと思うんだけど……」 「それにしても、琥珀がいうとなんだか空々しく聞こえるわね」 「あはっ、気のせいですよ気のせい」 手を振りながら笑う琥珀。 「……ぞっこんラヴ」 呟いて少し頬を染める翡翠。 こうして、今日も平和な遠野家の夜が訪れる。 ━了━